「 好 き だ よ 」

「あっこ見て見て。ほら、宇多くん。あの人バスケ部なんだって」



ベンチで試合を観戦している──周りより遥かに小柄な宇多くんを指差して、最近得た情報をあっこに教えてあげる。


そしたら、



「知ってるけど」

「えっ」

「あんた逆に知らなかったの?」



あっこに「つめてー女」ってビックリされた。

う、うるさいな! 別にいいじゃんね。


宇多くんなんて、知ってることより知らないことのほうが多いんだから。






「……ね、呼んでみる?」

「えっ。呼ぶの?……呼んじゃう?」



それから、ほとんど無心で試合の観戦していたら。

ふと、緊張混じりのひそひそ話がななめ前から聞こえてきて、無意識的に目を向けた。


同じ学年の、隣のクラスの女の子、だ。

2人とも顔見知りではないけれど、顔だけなら一方的に把握していた。


この2人も進藤先輩目当てかな?


顔を赤らめる2人がなんだか可愛くって、思わず口元がゆるんじゃう。



「……呼ぶよ?せーので、一緒に呼ぼうね」

「うんっ。 いくよ? せーのっ……」


< 26 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop