「 好 き だ よ 」

私のことを苗字にさん付けで呼ぶ人は先生以外1人しかいないし、それにもうほとんど聞き慣れてしまった彼の声。


振り向くと、やっぱりそこには宇多くんがいて、
そして、息を切らしてて、なんだかちょっぴり……焦ってるようす?



「ど、どうしたの?」

「…や、白石さん、見えたから……」



肩で息する汗ばんだ宇多くんは、両膝に手を乗せて、すこし前かがみになりながら、必死に呼吸を整えている。

小脇に、1本のペットボトルを抱えて。



「走ってきたの?」

「……ちょっと焦って…」

「焦る? なんかあったの?」



??

なんだか様子のおかしい宇多くん。落ち着くまでしばらくじっと待ってると、



「……右京先輩、」

「え?」

「を、観に来たの?今日」



< 30 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop