「 好 き だ よ 」
私のことを苗字にさん付けで呼ぶ人は先生以外1人しかいないし、それにもうほとんど聞き慣れてしまった彼の声。
振り向くと、やっぱりそこには宇多くんがいて、
そして、息を切らしてて、なんだかちょっぴり……焦ってるようす?
「ど、どうしたの?」
「…や、白石さん、見えたから……」
肩で息する汗ばんだ宇多くんは、両膝に手を乗せて、すこし前かがみになりながら、必死に呼吸を整えている。
小脇に、1本のペットボトルを抱えて。
「走ってきたの?」
「……ちょっと焦って…」
「焦る? なんかあったの?」
??
なんだか様子のおかしい宇多くん。落ち着くまでしばらくじっと待ってると、
「……右京先輩、」
「え?」
「を、観に来たの?今日」