好きになってはいけない人
ぶっきらぼうに吐き捨てる。
何よ。さっきキスしてきたくせに。
あれ、何だったのよ。
あんたのせいで 頭からあの事が離れない。
私、あれからずっと火照ってるのが自分でも分かるよ。
「ロクでもない奴なんかじゃない。
トラなんかより 全然マシな人だし。」
トラを睨みながらそう言うと。
トラも私を上から見下ろすように冷たい目でジロリと返された。
「2人とも喧嘩しないでよ。
今から出勤なんだから。ほら。穏やかに。」
チナツ先輩。穏やかなんていられないよ。
唯一信頼できる先輩と恋の話も出来ない。
そもそも好きになってはいけない人だから。
そんな人とキスをしてしまった私は最低以外の何者でもないのに。
ドキドキして、トラを見るだけで。
考えてしまうんだから。