好きになってはいけない人
「おぃ。」
それでもクラスが一緒なトラは
避けるにしても限度がある。
呼び止められれば、無視するのは かえって不自然だし。
「なに?今急いでるんだけど?」
ただ話すのも怖い。
あの事があってから 目を合わす事すらしてない。
怖いんだ。目が合って。
その大好きな人の目に吸い込まれてしまうのが。
感情がトラの目に映ってしまわないかって不安になる。
「すぐ終わる。来いよ。」
「え。トラ!分かったから、手は離して。」
ここは校内だ。
私なんかといるところを チナツ先輩に見られるわけにはいかない。
私がそう言うと、トラはもっと強く手を握った。
痛いくらいに。
離してほしいのに、離して欲しくない。
こんなに強く手を握られたのは初めてで、こんな状況でさえドキドキしてしまってる自分が情けない。
トラは私の手を引いたまま
資料室に入っていった。
「俺のこと避けてるだろ。バレバレ。」
ため息を含めながらトラは言う。