新人をナメめてはイケません![番外編あり]


《オマエはもうシんだあああ!クハハハハ!》




時刻は14時を回ったところ。

観始めてから終盤でもない場面でこんな台詞が画面から轟く。




観ているのは、ファンタジーもの。

額に傷のある魔法使いの少年が、たくさんの愛と友情に触れ合いながら、悪と闘っていく物語──とあらすじに書いてあることを要約してみるとこんな感じだろう。




この映画はシリーズもので、俺たちが観ているのは最終章にあたる。



シアター風に演出するため、部屋を暗くしているものの、外はまだ明るくカーテンから光が射し込む。




そんな中で画面から悲鳴や雄叫び、罵声が次々と響くたびに、同じように声を上げている人物を横目で見る。






《キサマ モ コロシテヤルッ》

「ヒギャアアア!」



《コレで オワリダァアア!!》

「イヤああああっ!!」



集中したいどころか予想外過ぎて。

反応に戸惑ってる、俺は。




大丈夫って言ってたじゃねーかよ。
全然じゃん。

何その反応。可愛すぎだろ。



彼女はいま右手で俺の袖をガッシリ掴んで、左手で目を覆ってる。


度々声を上げるのは覆ったその隙間から覗いているからだ。





「うぅ~~っ」

「怖いんだったらあんなこと言うなよ」

「だってっ、ホラーじゃないって……ヒィ!」





次は抱きついてきた。


オイオイオイ、これはまじで駄目なやつだから。

一体こいつの神経どう出来てんだ?!


危険の〝キ〟の字も頭にないだろ、美紅。





「わかったって、今消すか、」

「だめ!最後まで見……ギャッ!!」



また悲鳴をあげたのは画面の中で二つの光線がぶつかり合ったときだった。


抱きつきながら顔を埋めてくる美紅。


家には俺たちしかいないのに何故か恥ずかしい。



それもそうだ。
好きな女に、しかもやっと恋人になれた女とこんなにベッタリくっつかれちゃ、この上ないくらいの幸せしかない。



なんだろこの感じ。恥ずいけど嬉しい。







言葉に出来ねぇ……。






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