新人をナメめてはイケません![番外編あり]
「なぁ。呼んでよ、名前」
「陽人さん」
「違うって。呼び捨てで」
「は!?よ、呼び捨てっ?!それは、ハードル高いですよ……」
「一度でいいよ」
首に回された手を退かして、向き合う形になった。
手は掴んだまま。離れないように。逃げられないように。しっかり握る。
視線が絡むと、美紅はふひっと照れ笑いをした。
一度しか言いませんからね、とでも言いたげな目に、俺は微笑む。
「陽人」
柔らかな声で発された自分の名前。
俺の名前すら、特別に思えた瞬間。
俺はどうかしてると思うよ、今日は最高に……。
そして彼女は、はにかんで笑う。
こんなのってさ、もう駄目じゃん。
ほんと、困る。ムカつく。
もう、……知らねぇからな。
ゆっくり近づいていくお互いの顔。
それはとても自然に、お互いを引き寄せた。