隣人が世話焼きな件について
「写真撮りに行って良かったでしょ?」
出されたコーヒーを1口飲んで、こうちゃんが口を開く
写真館ではほとんど喋らず撮影時以外私の隣にいたこうちゃんはなんだか嬉しそうだ
「うん、こんなに違うなんて思わなかった!こうちゃんありがとう!」
カバンにしまってあった証明写真を取り出して再び眺める
それにしても、おねえさんキレイだったなぁ…
「そうだね」
心の中で思っていたことが口に出ていたらしくこうちゃんが相槌を打ってくれた
「丁寧だし、動きもすごくキレイだった!お姫様になった女の子もめちゃ可愛かった!」
興奮気味に話す私に「うんうん」と微笑み相槌をくれる
「私もあんな女性になりたい〜」
願望を言うのは自由だ
「なればいいんじゃない?」
突然こうちゃんからおかしな提案がされる
「私なんかがなれるわけないよ!」
即座に否定する
「どうして?」と首を傾げるこうちゃん
「おねえさんと私じゃ違い過ぎるもん」
「日下杏(くさかあん)さん」
突然名前を口にしたこうちゃんに「え?」と返す
「さっきのお姉さんの名前」
そう言ってコーヒーをまた口にする
「今年卒業しちゃったけど、大学の構内でよく写真撮ってた人覚えてない?」
こうちゃんも私と同じ全国的に有名な総合大学のC大に通っていた…というか私がこうちゃんを追いかけたと言う方が正しい
こうちゃんの言葉に構内で写真を撮っていた人物を記憶から探る
1人だけ記憶にある…顔までは記憶にないけれど
構内のあちこちでカメラを構えてるのを見かけた記憶
「彼女の入学前のオリエンテーションで俺が受付してたから覚えてるんだけど」
私も入学前に参加したオリエンテーションという名の交流会
こうちゃんは毎年実行委員をやってたな
「その時からカメラは持ち歩いてたけど、言葉遣いも所作も佳香が参加した時と大差なかったから在学中にそうなれるよう努力をしたんじゃないかな?」