隣人が世話焼きな件について
こうちゃんを追いかけて入学してなんとなく過ごしてきた私と違い、こうちゃんも日下杏さんも在学中に努力をしてきたんだ
なんだか努力をしていないことが恥ずかしくなり顔を俯かせる
「顔や体型は彼女のようになれなくても、言葉遣いや所作は努力すればなれるものだよ」
こうちゃんは微笑みながら続ける
「始めることに遅いなんてことはないよ。むしろ佳香は今気付くことができたし、『日下杏』さんていう明確な目標もいる。」
「やらない理由なんてある?」首を傾げるこうちゃん
「やる…私もキレイなおねえさんになる!」
いつでも私をヤル気にさせる
こうちゃんの言葉は本当に不思議だ
「じゃあ就職活動頑張らなきゃね」
突然就活の話になり「え?」と今度は私が首を傾げる
「目標とする人がいるなら、その人の下で働くのが1番の近道だよ。間近で見て学べるし、その人が心がけていることを直接教わることもできる」
おおおおおおー
「さっきお店にいる間、見たもの感じたもの全てにおいてどう思った?」
「感動した!撮ってもらった写真はもちろんだけど、小さい女の子があっという間にお姫様になったのとか、スタジオのセットがバババーって変わってくのとか、全部!」
こうちゃんの問に興奮気味に即答する
「その感動を佳香が与える側になると想像したらどう思う?」
私がした感動を与える側…
こうちゃんの言葉にもしも自分があそこで働いていたらと想像する
写真館で働いたことなんてないから、仕事を覚えるまでは大変かもしれない
でも慣れて日下さんみたいに動けるようになったら…
日下さんの下で働いたら…
「すごく…楽しい…かも…しれない」
想像しただけでワクワクしてきた
「採用試験受けてみてもいいんじゃない?」
こうちゃんの提案に「うん!」と笑顔で返す
つい先日まで就職活動に全く気乗りしなかったのに、一気にヤル気が出てきた