隣人が世話焼きな件について


「あっ」


まだ書き始めたばかりのところで住所を間違えた


住所なんて21年間同じとこに住んでてどうして間違えるかなぁ…


自分で自分に呆れる



気を取り直してもう1枚!


「あっ」

今度は住所は間違えずに書けたのに学歴の『高等学校 卒業』と書くところを間違えて『高等学校 入学』と書いてしまった


『高等学校 入学』の文字が2行並んでしまった


その後もミスを繰り返し、7枚入の履歴書はついに最後の1枚になってしまった




「佳香」


いつの間にか仕事の手を休めこちらを伺っていたこうちゃんに呼ばれ顔を上げる



「落ち着いてゆっくり書けばいいんだよ。人事の方は履歴書をよく見るからね、雑に書いたものはすぐにわかるよ。履歴書だけどラブレターを書くみたいにその会社に入りたい想いをこめて丁寧に書くんだよ」



『ラブレター』


いつものように微笑みながら教えてくれた言葉に焦っていた気持ちが落ち着く


新しい履歴書を横に退けて、失敗した履歴書を1枚手元に戻す


1度最後まで書いてみてから新しい履歴書に書き直そう

失敗したやつだから何回失敗しても大丈夫!


志望動機もいきなり本番より、ここでしっかりまとめよう




下書きを始めた私を確認してこうちゃんもキーボードを打つ手を動かす









「できたー!」


下書きをしたおかげで最後の1枚は失敗せずに書くことができた



両手を上げて伸びをする



「僕も終わったから紅茶でも飲もうか。汚さないうちに片付けておいで」


パソコンを閉じながらされたお茶のお誘いに頷き、履歴書をしまうべく自室へ戻る


仕事モードのこうちゃんの一人称は『僕』


社長さんと話す時は『私』と言っているのを前に社長さんから電話が来た時に話しているのを聞いた



使いこなすこうちゃんはさすがだとしか思えない






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