隣人が世話焼きな件について


面接当日は緊張で眠れないかと思いきや、やっぱりいつものように熟睡し、いつものように朝こうちゃんに起こされる



面接は昼過ぎからだけど、こうちゃんと食べる朝食は欠かせない





「佳香、遅刻だけはしないようにね」


こうちゃんを仕事に見送る玄関でこうちゃんが靴を履きながら口にした言葉


「子どもじゃないんだから大丈夫だよ!」


過保護なこうちゃんに向かってぷくーっと頬を膨らますとこうちゃんはクスっと笑った


「佳香の想いをぶつけておいで」


子どもにするみたいに私の額にひとつキスをして「いってきます」とドアの向こうに姿を消す




私は額を押さえ顔が赤くなっていくのを感じた



こうちゃんは恋人になってからキスはしてきてもそれ以上をしてくることはない


ちゃんと想いが通じて1年半は経つのに…



性欲がないわけではないと思う


昔…まだこうちゃんが大学生で私が高校生だった頃にキレイな女の人とホテル街へ入って行くのを見てショックを受けて、しばらく思うようにトスを上げられなかったこともある




そんなわけで正常な男であるはずのこうちゃんにキス以上のことを求められないことは謎でしかないが、その先すら未知の域である私には聞く勇気なんてない





とりあえず、こうちゃんの言うように面接に遅刻してはいけないので、まだ時間はあるが早目に準備をする



ちょっとだけ着慣れてきたスーツに身を包み、お昼前に家を出て、最寄り駅から4駅先の本社のある駅でご飯を食べることにする




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