隣人が世話焼きな件について


チャペルの扉が開き新郎の酒井くんが一礼し入ってくる

シルバーのタキシードは長身の彼によく似合っていた



そして再び開かれた扉から聖歌の中、杏さんがお父さんと入場する


マーメイドラインの裾が広がったドレスは杏さんにピッタリで世界一キレイな花嫁に入場すらも終わる前から号泣する私


アイメイクを全てウォータープルーフにして正解だった




挙式後のフラワーシャワーではラグビー部の面々にはやし立てられ、酒井くんは杏さんをお姫様抱っこしてゆっくりと歩いて行く


ラグビー部恐るべし…



そしてブーケトス…するかと思いきや、投げずに口を開く


「今日はどうしてもブーケを渡したい人がいるのでトスしませーん」



そう言って階段を下りてきて、人をかき分け行き着いたのはこうちゃんの前…



ええ!?


参列者がザワつく


そりゃ男にブーケ渡すって…






「佳香のこと幸せにしないと許しませんよ?」





ニッコリと最上級に黒い笑みを浮かべブーケを差し出す杏さん




その言葉に再び熱いものが込み上げる






「もちろんです」



いつもの微笑みでブーケを受け取り私の方に向き直る






「佳香…26年間佳香と過ごしてきて、やっと言える」







「結婚しよう」








決壊した涙腺はポロポロと涙を零し私の視界をぼやけさせる




「はい」





こうちゃんから差し出されたブーケを受け取ると参列者から拍手が起こる







大好きな杏さんが幸せになるまでは結婚できないって思っていた私の気持ちをきっとこうちゃんは気付いていた





だから今日ブーケを譲ってくれってお願いしてたに違いない






だってこうちゃんは世界一優しくて世話焼きなんだもん











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