マーメイドはホテル王子に恋をする?!
そう言えばさっきから鼻がむず痒い。
潮水の所為かな。
喉の奥がヒリヒリする。


「花梨」


社長のキーボードを打つ手が止まった。
やっと終わったのかな…と振り返るが早いか、既に私の側に来ている。


「あの……」


何なんですか。その顔。
睨んでる様に見えるけど気のせい?


「ちょっと悪い。触れるぞ」


今更のように断っている。
さっきは身動きも出来ない私にいきなりキスをしてきたのに。


スッと出された掌の行方を凝視した。
何処に触れるつもりなのかを確かめようとしたのだ。



「……やっぱり熱い」


社長の手が触れた場所は額。
膝を折り曲げた彼が、私の方に近づいてくる。


「しゃ…社長…?」


なんかアップになってない?
なぁに?またキスするの?!


ギュッと目を閉じて俯いた。
体温と吐息を感じて目をそろっと開けば、心臓が飛び出るかと思うくらいに社長の素肌が間近に見える。

日焼けしたように薄っすらと赤い。もしかしたら今日の陽射しで焼けたのかも……。


「熱があるぞ」


顔を離しながら呟く社長。
自分の額をくっ付け、熱を感じ取ったらしい。


「そんなことないですよ。熱なんて感じません」


鼻と喉の間が少しヒリヒリしてむず痒いだけ。
風邪のひき始めみたいな症状だけれど、こんなの水泳をしていた頃はしょっちゅうで……


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