マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「だったらきっと上がる前だ。とにかくベッドで休んでおけよ」


「いえ、私は家に帰りますから」


とんでも無い。
この部屋で寝るなんてあり得ない。


「社長、申し訳ないんですが、私の服をレンタルブティックから持って来て下さいませ……っひゃっ!」


身を乗り出して頼みかけたところへまたしても足元を掬われる。
軽々と持ち上げる社長の腕に抱えられて、さっさとベッドに運ばれてしまった。


「その状態で帰るなんて無謀だ。今夜はこのベッドで休め!」


あーん、暴君社長に戻ってるー。


「さっきも言ったが、俺の心臓を止める気か。頼むから病人はそこで大人しく寝てくれ」


これって怒ってるの?それとも願っている?


「私は病人ではありませ……んっ……ん…っ……んんっ!」


社長の唇は再び私の口を塞いだ。
頬を包み込むように優しく触れた指先が耳元から背中に回り、ゆっくりと押し倒されていく。


「…っは…ん……ん……っ…」


ヤダ。どうして何とも思わない私にこんな濃厚なキスをするのーー。


ギュッと社長のワイシャツの袖を握りしめた。
背筋に走るのは悪寒ではなくて快感に近いものがある。



「…っはぁ……」


ゆっくりと抜かれた舌の先に唾液の雫が垂れている。
やっと目を開けている様な状態の私に満足そうな笑みを浮かべた後、社長は自分の体を離した。


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