マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「そのまま休め。熱が上がったら介抱してやる」


パサッと羽毛の肌布団を掛けられた。
このベッドで寝るなんて二度目のことだ。


「今日はありがとう。花梨のお陰で大事に至らずに済んだよ」


ぼぅっとしてくるのは熱のせいかな。
それとも私、社長のキスに酔ったの?


「お休み。マーメイド」


微睡む意識のラストに聞こえたのは社長のこんな言葉だった。

そのまま海の深みに嵌るように眠気が急に私を襲ったーーー。


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ーーー足が重い。

このまま泳いでゴールまで辿り着くなんてとても無理だ。

もう止めたい。
泳ぐのなんて止めたい。


もう嫌。
皆に期待されながら泳ぐのなんて真っ平御免。

いっそのことプールの底に沈んだままでいたい。
這い上がらずに本当のマーメイドのように水の中で暮らしたい。
陸のことなんて考えずに、ひっそりと誰にも邪魔されずに暮らすのだ。


ああ、だけど、本当に足が痛いよ。
まるで水の底に引き摺られていくみたいに、自由に動かせない。
右足の膝から下が伸び切っていて、痙攣でも起こしているみたいだ。



「痛…い…」


これってこむら返り?
久し振りに海で泳いだから足が冷えたの?


「うっ…!」


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