マーメイドはホテル王子に恋をする?!
足裏を押し返して筋肉の緊張をほぐそうとしている人がいる。
いきなり強い力で押すものだから余計に激痛が走った。


「痛い…っ!」


痛くて堪らない。
止めて。突っ張った筋肉はそう簡単には戻らないってば。

親指の筋がピンと張ったまま土踏まずの辺りが固くなって痛い。
 
  
助けてよ。
痛いってば。


ぎゅっと枕を握り締めると脚の裏を押し返していた手が離れ、今度は温かいものが脹脛の上に乗った。
膝から下を包み込んで、じんわりと痛みが和らいでいく。


「いい気持ち……」


痙攣も治まってくるみたい。


「……大丈夫か?」


脹脛の筋肉をマッサージしながら聞く人の声がする。

何処かの誰かに似ているような声だけど誰だろう。
この最近よく聞く声のような……


(まさか……この声……)


「…社長!?」


飛び起きて上半身を振り返る。
私の足元にいるのは、やっぱり王子と呼ばれる社長だ。


「あわわ…っ!そんなことしなくていいですから…!」


途端に目が覚めた。

白いフェイスタオルを置いた右足を触り、慣れた手付きでマッサージを施している。

何なのこれ。罰ゲームか何か!?


「いいよ。こむら返りを起こしたんだろう。さっきからベッドの中で七転八倒を繰り返していたから嫌でもこっちも目が覚める」


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