マーメイドはホテル王子に恋をする?!
それと入れ替わるように大川主任が辿り着き、「あの方です」と視線を流す。
流された席の方を見つめた主任は目を見開き、サッと顔色を変えた。


「お…王子」


発した一言に「はぁ?」と怪訝そうな声を出しかけて止める。
王子って何よ…と思いながら、駆け寄る主任の背中を見送った。


「大変お待たせ致しました。当ホテルでコンシェルジェを務めております、大川大吾(おおかわ だいご)と申します」


深々と頭を下げるところを見れば、やはりあの人は大物らしい。
ハリウッドスターではないと思うが、何処かの国の王子様なんだろうか。


「本日お着きになるのでしたら、ご連絡をして頂ければお迎えに上がりましたのに…」


体幹に両腕をくっ付けた姿勢のままで言い訳をしている。
サングラスをかけた男性は主任に顔を向けたまま、「出迎えなんて必要ない」と囁いた。


「それよりも…だ」


不機嫌な感じで声をかけ、ラウンジの革張り椅子から立ち上がる。
ビクッと背筋を伸ばす主任に呆れながら、フロントへ行こうと歩きだした時だ。


「何だ。この田舎旅館はっ!」


大声で怒鳴る人の言葉に再び足が止まった。
(何ぃ〜?)と聞きづてならない思いを胸に抱いて振り返った。


「これがリゾートホテル?ふざけるな!大川、このホテルは本社のコンセプトを蔑ろにしているぞ!」


「はっ、誠に申し訳御座いません」


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