マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「はぁぁ〜〜」


重い溜息を吐きながらベッドの上に寝そべる。
スィートルームで汗を流してから帰って来て良かった。

あのおばさん連中がいる前でお風呂になんて入ったら、彼氏と夜を過ごして朝帰りだったらしいわよ…と、変な噂まで撒き散らされるところだった。


だけど……


「実際はそうじゃん」


私は自分の体のあちこちに残る社長の唇の痕を呪った。
どうしてあんな流れで体を許してしまったのだろうか。
いくら社長がイケメンだからと言っても、もっと焦らせておけば良かった。


ぎゅっと頭元にある枕に手を伸ばしてしがみ付く。

社長の体をこうして何度も抱き締めてしまった。
キスをして欲しいと強請り、もっと……と執拗なまでに彼のことを欲しがった。


あれではまるで私が彼に欲情をしただけだと取られたかもしれない。
社長に恋する気持ちは微塵も伝わらずに、ただ彼の体を求めただけに思えたかも。


社長はフェミニストらしく断らずに明け方まで付き合ってくれたけれど、私が疲れきって眠りにつく頃、自分もやっと解放された…と安心したことだろう。


今頃、どんな気持ちで仕事をしているのだろうか。
私を抱いて、田舎娘を一人落としたことを喜んでいるのだろうか。


馬鹿な奴…と思われていたら癪だ。
だけど、そう思われてもいいからまた彼に抱かれたい。


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