マーメイドはホテル王子に恋をする？！
彼はまた今朝と同じように、淡々とした態度で私に接してくるのだろうと思う。
まるで月曜日の情事など無かったかのように振る舞うに決まっているのだ。


それは社長にとっては当然なのだ。
私に本気になられても彼としては困るだけなのだから。


わかっている…と頭では幾らでも理解している。
だけど、気持ちがどうしても割り切れない。

たった一日だけの恋人役だったとしても、たった一晩だけの相手だったとしても、それらを全く無かったことにされては嫌だ。

せめて…でもいいから彼の心の何処かにくい込みたい。
私のことを暫くは思い出してくれるようなことをして驚かせてやりたい。


それは何？と自分に問い掛けたところで答えが見つかる訳もなく、その後は予想通りに女子社員達に質問攻めにされながら業務をこなし続けることになった。


昼食休憩を早目に取り、町内を巡回する警察官が来るのを待った。

午後三時を過ぎればチェックインが始まりだす。
忙しい時間になる前に来てくれないだろうかと思っていたところへ、水色の半袖シャツと暑そうな黒のベストを着込んだ警察官が三名訪れて来た。


「橋本花梨さんという方はいらっしゃいますか」


フロントに立つ私に問いかける厳つい顔のおじさん。
頭の中で（名札を見なよ）とケチを付けながらも営業用のスマイルを浮かべた。


「橋本花梨は私ですが」


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