マーメイドはホテル王子に恋をする?!
ホテルの顔だと意識しつつ返事をすれば、警察官の一人が「あ…」と小さな声を漏らした。
その人の顔を見て、思わずこっちもハッとする。


「橋本?」


「寺岡君!?」


つくづく狭い町だな。
こんなところにまで同級生がいるよ。


「何だ。知り合いか?カッちゃん」


一番年上っぽいおじさんが、聞き慣れたニックネームで彼のことを呼ぶ。


「同級生なんですよ。中学校時代の」


なぁ…と同意を求められ、こくっと頷き返した。


「カッちゃんの同級生で橋本さんと言えば、もしかしてあのマーメイドと騒がれた女の子か」


私のことを知っている様なおじさんの一人が、驚いたような目で私のことを振り返った。


「マーメイドと言うのは言い過ぎですよ。こいつは俺たちの中では『カッパ』と言われていた女子ですから」


笑いながらこれまた古いネタを出してくる。
若松といい寺岡といい、中学時代の同級生にはロクなのがいない。


「カッパなんて失礼なことを言ってはいけないよ。こんな綺麗なお嬢さんなのに」


窘めるのは最初に声を掛けてきたおじさんだ。
結構いい人じゃないの…と、見直すように目を向けた。


「先日、ホテルの敷地内で起きた海難未遂事故の一件で伺いました。出来れば発見当初の詳しいお話を伺いたいのですが、多少時間を頂いても宜しいでしょうか?」




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