マーメイドはホテル王子に恋をする?!
私のことを綺麗なお嬢さんだと褒めてくれた人が一番上の役職らしい。
下っ端の寺岡君は書記係らしく、サラサラと私の話や社長の説明をメモし続けていた。


私は自分の話すべきことを話してしまった後は、さっさと部屋を出て行きたいと体を捩る。
チラチラと社長に視線を送り続けているのに、彼はそんな私に目を配ることもない。


隣に座っているというだけで息が詰まりそうになっているのに、この拷問にいつまで耐えればいいんだ…と、苦痛にも似た思いを抱き始めた頃ーーーー


「そう言えば橋本さんとうちの寺岡とが同級生だそうで」


一番年上そうに見えたおじさんが、ある程度の話が切れたところで言いだした。


「そうですか」


社長はビジネスライクな微笑みを見せて彼の話に答えた。


「県内の水泳選手として期待されていたマーメイドちゃんのことを中学時代には違う呼び名で呼んでいたそうです」


「ほう」


変なところで感心するような声を出す社長に振り向いてしまった。
彼の視線がさらっと向けられ、ドキッとして直ぐに反対を向く。


「その別名というのは何ですか?」


最初に自己紹介をしたから視線は直ぐに寺岡君に注がれたらしい。
彼は笑いながら「あのですね〜」と言い出すものだから、私はガタン!と席を立ってしまった。


「私…失礼してもいいでしょうか?」


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