マーメイドはホテル王子に恋をする?!
翌日からは何かと忙しくなった。

社長が始めると言っていた改造計画が開始され、各セクションの責任者達は、それぞれの持ち場を変えていくのに必死の状態が続いた。

こんな時にホテルの改造どころの気分じゃないよ…と思っていた私にも仕事が振られ、社長を訪ねてくる若松君や養鶏所の所長さんの相手をしなければいけなくなった。


社長は毎日いろんな人の訪問を受けている。

時には若松君から紹介して貰った漁師さんの元へ直接自分が出向いたり、養鶏所の所長さんに教えられた地元の畜産家を訪ねたりもしている。


つくづくホテルが好きなんだ…と実感する。
彼の思惑通りにこのホテルのグレードが上がり客層が変われば、町が潤うことは間違いない。


そうなれば、あのヤンキー達のような危険な人達は少なくなるのかもしれない。
過疎化で産業も少ないこの町が、別の意味で華やぐ日が訪れるのかもしれない。


だけど、その日が来たら社長はどうなるのか。

改革担当としてこのホテルの改造を任され、目標を達成することが出来れば、きっとまた次の場所へ行けと指令が下されるのだろうと思う。


彼はあくまでも経営グループの一社員に過ぎなくて、役員でもない限り、一つのホテルに留まったりはしない。

もしも、万が一留まることがあったとしても、きっとこんな田舎のホテルではないのだ。


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