マーメイドはホテル王子に恋をする?!
一番上と二番目のボタンを締めずに開け放した隙間から見える鎖骨。
あの夜何度も唇を寄せ、掻き抱いた人の首元に似ている。
まさか…という気持ちが強まる。
でも、そんなことあり得ない………
「いつまで人の体を見ているんだ、花梨」
不満そうに名前を呼び捨てる声も聞き覚えがある。
それでも信じ難くて、本当に…?という思いばかりが溢れる。
「間抜け面になっているぞ」
暴言を吐く声に目線を上げた。その顔を見たまま、一瞬、時が止まったーーーーー。
「……潤…っ!」
名前を呼びそうになって、慌てて口を噤んだ。
この人はもう独身の王子ではない。
きちんと結婚をして、妻帯者として此処へ戻って来たのだ。
口を開けば泣き言を言いそうな気がして、言ってはいけないと思う所為か、どうしても唇が開けない。
目を見開いたまま唇を閉ざす私の顔を眺め、彼は不思議そうに首を少し傾けた。
「どうした花梨、童話のマーメイドみたいにものが言えなくなったのか?」
砂を踏みしめながら近づいて来る人が笑う。
真っ直ぐに向かってくる人と、こんな場所で二人きりになっては駄目だ。
思わず反射的に逃げようとした。
あれ程もう一度会いたいと願い、会えたら駄目元でもいいから気持ちを打ち明けようと考えていたのにーーー。
あの夜何度も唇を寄せ、掻き抱いた人の首元に似ている。
まさか…という気持ちが強まる。
でも、そんなことあり得ない………
「いつまで人の体を見ているんだ、花梨」
不満そうに名前を呼び捨てる声も聞き覚えがある。
それでも信じ難くて、本当に…?という思いばかりが溢れる。
「間抜け面になっているぞ」
暴言を吐く声に目線を上げた。その顔を見たまま、一瞬、時が止まったーーーーー。
「……潤…っ!」
名前を呼びそうになって、慌てて口を噤んだ。
この人はもう独身の王子ではない。
きちんと結婚をして、妻帯者として此処へ戻って来たのだ。
口を開けば泣き言を言いそうな気がして、言ってはいけないと思う所為か、どうしても唇が開けない。
目を見開いたまま唇を閉ざす私の顔を眺め、彼は不思議そうに首を少し傾けた。
「どうした花梨、童話のマーメイドみたいにものが言えなくなったのか?」
砂を踏みしめながら近づいて来る人が笑う。
真っ直ぐに向かってくる人と、こんな場所で二人きりになっては駄目だ。
思わず反射的に逃げようとした。
あれ程もう一度会いたいと願い、会えたら駄目元でもいいから気持ちを打ち明けようと考えていたのにーーー。