マーメイドはホテル王子に恋をする?!
緊張しながらも受け取り、頼みます…というのはどういう意味なんだ?と振り返る。
もしかして社長はやっぱり暴君で、どうしようもない暴れ者だったりするのか?


(そんなのだったら頼まれても困るよぉ…)


自分でも何を言っているんだ…とツッコミを入れつつ、階段で四階まで上がった。
一気に歩いたのは久し振りだったものだから、息が切れて仕様がない。

それでもソワソワする気持ちが抑えきれなくて、呼吸を乱したままスイートルームのドアの前に立った。


部屋に入ったら先ずは自宅へ電話をかけておこう。
社長の帰還祝いをやることになったと、嘘でも吐いておこうか。

そんな事をしなくても、私の恋人が社長だと噂されてしまったこともあり、今更なんだけど…とも思う。


けれど、社長と二人だけの時間を邪魔されたくない。
納得いくまで話をして、お互いの気持ちを確かめたい。


願わくば、私がさっき耳にした言葉が嘘ではありませんように。
社長が私を本気で好きで居てくれますよう……。



(ナムアミダブツ)


自分で念仏を唱えつつ、少し可笑しくて吹き出しそうになりながらカードキーを翳して中へ入った。


スイートルームには社長の荷物と思われるスーツケースが運び込まれてあった。
そう言えば、彼はいつまでこの部屋に住む気なのだろう。


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