マーメイドはホテル王子に恋をする?!
どのくらいの期間このホテルで社長として働くのかは知らないが、田舎と言えども彼が一人住むくらいの空き家なら幾らでもある。

景色も絶景だから別荘みたいな家もあるのだと聞いたこともあるが……。


私はよく知らないけれど、若松君に聞けば詳しいかもしれない。
町内の空き家情報なら警察官をしている寺岡君に聞いても知っていそうだ。


とにかく地元の同級生の一人に聞けば間違いなく情報は入るだろう。
話が直ぐに伝わるような狭い田舎町だけど、だからこそ助かる部分も多い。


あったかい人柄の人が多くて、孤独でいる者を放っておくことなんてしない。
だから大学時代の就活に失敗した時も、取り敢えず此処へ戻ろうと思った。

願う道とは違っていたから、多少の涙も飲んだけれど……。


(…でも、やっぱり帰ってきて良かった。社長が私と同じように、そう思ってくれたら嬉しいのに……)



自宅に電話をかけた後、ぼぅっと闇に映る対岸の島の明かりを見入った。

水平線に見えるのは漁火のようだ。

明るく星のように海上を照らしているが、今夜は闇夜なんだろうか。

波も静かだったし、漁の調子はどうだろうーーー。



ピンポーン!…とくぐもったようなインターホンが聞こえ、ドクン!と心臓が跳ね上がった。


来たーっ!
…じゃない。お邪魔しているのは私の方だ。


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