マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「この部屋では潤也でいいよ。今ここにいる俺は、ホテルの社長じゃないんだから」


「…じゃあ……何?」


髪から頬に移った掌が熱い。
ドキン…と胸が鳴り響いて、彼の体温を感じる。


「恋人だと言っただろう。二人で出掛けたあの日から、俺の胸を独占しているのは花梨だけだよ」


好きだ…と囁く唇に目を向け、信じているけれど「嘘…」と呟く。


「私はこんな田舎で生まれ育った地味な女なのに。貴方のように顔立ちも育ちも派手じゃないし、都会的でもない」


「何処で生まれても花梨は花梨だろう。町民からマーメイドと呼ばれて溺愛されて、何処に行っても注目の的だったじゃないか」


同級生の男からも茶化されてさ…と詰まらなそうにしだす。


「それを言うなら社長だって皆に見られていましたよ!」


「あれは花梨が側に居たからだろう。少なくともこの町では、俺よりも先に皆が見ていたのはお前だった」


社長はそう言うと頬に軽くキスをする。
私が目を丸くしていると、口角を上げて話した。


「県内でもマーメイドとして名高い水泳の選手だったんだよな。だけど、これからは誰にもその肌を見せるなよ。
俺だけのものにしておけ。周りの者に負けないくらい、俺が花梨を溺愛してやるから」


もう一度「好きだ」と耳元で囁き、その耳朶に吸い付く。

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