マーメイドはホテル王子に恋をする?!
それを見たお客様が気に入れば売却することもできるし、そういうシステム作りも社長の考えが基礎になっている。


しみじみ社長はこの土地とホテルを愛しているのだと思う。

だから久し振りに戻ってきた時に寂れた雰囲気を目にして、悲しさというよりかは怒りに近い感情が湧いてきたのだろう。



(それで、あの言葉か…)



『これがリゾートホテル?ふざけるな!』


確かに旅館的なイメージが強かった。
ホテルなのは外観だけで、中身は田舎旅館だった。


「くくく…」


何だか可笑しくて堪らない。
私達従業員は、自らホテルを田舎っぽくしていたのだ。



「どうした、花梨?」


呆気に取られた表情の社長が側に来る。
気づけば会議は終わり、皆は持ち場に戻ったり、残って議論を続けている。



「何でもないの」


ホテルを愛している彼に出会えたことに感謝していた。
彼が此処へ来たことで、確実に皆が変わっていった。

それは自分も同じことで、あの再会の夜からこっち、毎晩のように彼の別荘に伺っている。

そこで彼に手料理を振る舞ったり、ジャグジーバスに浸かり、二人で夜空を見上げたりしている。


社長は私をとことん溺愛してくれて、木本さんにメイクやファッションを教えて貰ったんだと言えば、「もうそれ以上綺麗になるな」と止めてくる。

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