マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「わからないけど同級生に聞いてみるね。誰か知っている人がいるかもしれないし」


「お前達のネットワークは凄いよな。何処で誰が繋がっているか見当も付かん」


休みの重なる日に、二人で町内を回っているのを見かけられる度に、誰かから必ずLINEにメッセージが入る。

それがいつも『〇〇から聞いた』や『△△にいたんだってね』という人伝てな感じで。


「悪いことがまるで出来ない」


社長の言葉に可笑しくて、「本当ね」と笑った。
私が皆に「マーメイドちゃん」と呼ばれなくても、噂はいろんな場所に向かって発信されていくのだ。



新年度を迎え、五月のゴールデンウィークを前にチャペルのプレオープンがあった。
それには社長のご両親も集まり、私は初めて二人と対面した。



「初めまして。潤也さんとお付き合いをさせて頂いております、橋本花梨と言います」


緊張しながら挨拶をすると、二人は私を見て微笑んだ。

社長のお父さんは素敵な感じの方で、如何にもお金持ちな家のご主人といった雰囲気。

お母さんの方は海女をしていたと聞かされていた為か、快活そうで物怖じしない性格に見えた。


「君の若い頃に似ているよ」


「あら、そんなこと言われると光栄だわ」


お父さん達は結婚してからもずっと恋をしている様な雰囲気があった。
愛情の冷めない関係でいられるなんてとても素晴らしいことだ。


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