マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「潤也はもう花梨ちゃんにプロポーズをしたのか?」


お父さんの発した言葉に、飲み込もうとしていたシャンパンを吹き出しそうになる。
持っていたビールグラスを手放しそうになった社長は、焦ったような顔つきで振り返った。



「余計なこと言うなよ」


子供みたいだ。
まぁ実際に子供なんだけれど。


「女性をいつまでも待たせるとロクなことがないわよ。あなたもいい加減にいい年頃なんだから、さっさとお嫁さんになって貰いなさい」


お母さんに言われると形無しのようだ。
何だか片山さんに弱い理由が見えてくるみたい。



「…わかったよ」


諦めるように答える彼の様子を窺う。
その「わかった」の意味はプロポーズを考えるという意味?



(どうなんだろう…)


言われたら確かに嬉しいかもしれないけれど、あまり期待を持たずにいよう。
期待していた通りの結果になんて、なった試しがないから。


プレオープンのパーティーは無事に済み、社長のご両親は久し振りにホテルの部屋に宿泊することになった。

お土産コーナーが忙し過ぎてパーティーには出られなかった片山さんは、社長のお父さんの顔を見て、「王様がいらっしゃった!」…と大はしゃぎ。
とても懐かしがり、わんわんと大声を出して泣いた。

お母さんとも古くからの顔見知りらしく、お互いに手を取り合って再会を喜んでいた。


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