マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「花梨の同級生の警官が言っていただろ?マーメイド以外のニックネームで呼んでいたって。あれって何だ?金魚か何かか?」


どうやら同じ魚繋がりだと思ったらしい。
嫌なことを思い出したな…と、暫く無言でいた。


「なぁ、教えてくれよ」


それを聞いてどうする。
今は誰もそのニックネームでは呼ばないよ。


私が絶対に呼ばないで、と釘を刺したから。
時々同窓会でも話に上ることがあるけれど、睨み一つで黙らせているのだ。


「気になるんだよな。俺だけが知らないっていうのも嫌だし」


頼むから…と手を合わせる。
ホテルの社長を務める人が私にだけは甘えるんだ。



「ーーーーーカッパ」


二度とは言わない。
そう思って口にした。


「カッパ?」


ああもう、そんなハッキリと滑舌良く言わなくてもいいから。


「そ…」


返事をする気にもならず、プイと背中を向けた。
潤也さんは可笑しさを堪えるように咳払いをして、何事もないように「ふーん」と唸った。


「本当に泳ぐのが上手かったんだな」


何だか肩越しに視線を感じる気がするけれど気のせい?
人が気にしているのに、どうして肩ばかり見つめるんだ。


「知らない。人並みだって言ったでしょう」


確かに色々な大会で賞を貰ってきたよ。
だけど、タイムを気にせず泳いでいる間が、一番楽しくて面白かった。



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