マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「老けたなぁ…。…あ、いやお元気そうで何よりですね」


片山さんの諭しを受けてかどうか、言い方を和らげる「オサナイ」社長。
切り返しが上手い。人の扱いには慣れているみたいだ。


「ちょっと久し振りだからゆっくり話さない?酸っぱい夏ミカン用意するよ」


太々しいところは流石におばさん。
「オサナイ王子」も眉尻を下げ、「それだけは勘弁して下さい」と笑う。


笑っている顔はさっきの怒鳴った感じとはまた違う。
好青年…といった雰囲気で、育ちの良さが前面に出ている。



「ほらほら、こっちよ」


懐かしいでしょう…と言いながら、お土産コーナーに彼を引き連れて行く。

ラウンジの女性社員達はそれを羨望の眼差しで見送り、フロント前に残っている社員やパートさんも唖然とした感じで棒立ち。


私はその全員の様子を目で追いながら、新社長だと名乗った男性の背中を見つめた。


改革担当としてこのホテルにやって来たと思われる彼は、今日はまだ目立った行動はしないと思うが、明日からは何を言いだし始めるのかわからない。



(クワバラ、クワバラ)


どうかフロント業務には一切口を出さないで欲しい…と願いつつ、カウンターへと戻って行った。



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