マーメイドはホテル王子に恋をする?!
五分程度の時間が過ぎたところで、社長はそろそろいいか…と声を発した。


「このホテルには洗練されたものが無さ過ぎる。田舎にあるホテルだからと言っても、こんな低レベルではマトモな客なんて来ない。客室の稼働状況も悪過ぎるし、このままでは今年度の冬のボーナスは出せないぞ」


ザワ…と一瞬どよめきが立ちそうになった。
何ぃ~と思った私は、小山内社長の顔を睨んだ。


「そうなりたくなければ大改造に協力しろ。客数が増えれば給料のベースアップも約束してやる」


ベースアップ…という言葉に皆の表情が変わる。
ここ数年、ベースアップのアの字も聞いたことがなかったからだ。


「本当に約束してくれるのー?虚言じゃないでしょうねー?」


片山さんは田舎者特有の疑り深さを発揮した。
社長は「します」と力強く答え、その彼に目を向けた片山さんは「だったら協力してもいいけど…」と呟いた。


「皆もするよね?給料のベースアップなんて、ここ三年以上もなかった話なんだから」


そんなになかったんだ…と呆れてしまう。
うん…と頷く仕草を見せる面々を眺め、社長は満足げに微笑んだ。


「それじゃ先ずは宿泊料金を値上げする」


「「「「えっ!?」」」」


全員の声が一致した。
最初から読んでいたのか、小山内社長は顔色も変えずに続ける。


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