マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「何も今すぐに上げるとは言わない。その料金に応じた外観と雰囲気になってからだ。早くて半年先。遅くても来年度からはそうするつもりでいる」


いる…と簡単に言うけれどいいの?
そんなことをしたら、庶民は泊まれなくなってしまうのに。 


「あの……」


恐る恐る手を挙げた。
社長が私の方を振り向き、「何だ」と威圧的な声を出す。

一瞬何が言いたかったのかを忘れそうになった。
だけど、そんなのに負けるもんかと気持ちを奮い立たせた。


「そんなことをしたら客足が遠退きますよ。減ったらとうするんですか?」


このホテルはそれでなくても立地が悪い。
交通の便も悪いし、最寄りの駅からも離れているからマイカーで来るお客様が殆どなのに。


「その時はお前がステージで脱げばいい」


「…脱ぐって、それパワハラですよ!」


焦って全身から汗が噴き出そうになる。

社長は「冗談だ」と真面目くさった顔で返事し、絶対に客足の増えるホテルにしてやる、と豪語した。


「安心しておけ。ベースアップも出来るし上客が泊まるホテルにも改造する」


野生の豹みたいな眼差しを向けられ、不覚にも胸がドクッと鳴った。
不安とか何処かへぶっ飛んで行きそうで、私はぎゅっと両手を握りしめた。


「それじゃ本題に入るぞ。先ずはフロントからだ」


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