マーメイドはホテル王子に恋をする?!
ギクッと慌てて項目に目を向けた。

社長は私のことには一切触れもせず、明かりをもっと増やせと言いだした。


「行灯程度の明かりでは、来るのは人じゃなくお化けだ」


ブブブッ…と吹き出しそうになる大川主任。
私のことを人間の顔をした人魚だと言ったのも頷けるような発言だ。


「この町にはインテリアデザイナーは居ないのか?大川」


吹き出しそうになっているところへ声をかけられ、主任は慌ててその姿勢を立て直した。


「はっ…どうでしょう。大工は大勢いますが、インテリアデザインをする方が居るかどうかは不明です」


「じゃあ、先ずはその仕事をしている者を探し出せ。それから、そこの人魚姫」


ジロッと目を向けられ、やっぱり私のことかと思う。


「君はもっと派手なメイクをしろ。二日酔い明けのOLみたいな雰囲気でフロントのカウンターに立つな。フロントはホテルの顔なんだぞ。もっとそれを意識してくれないと困る。それから次はラウンジだが……」


一蹴した私のことなど構わず、次のセクションへと進む社長。


(こんにゃろ~!後で足踏んでやる~!)


持ち前の心の狭さでそう思った。
人をあれだけ罵倒しておきながら謝りもしないとはいい度胸だ。


(私だって本当はもっとメイクを上手にしたいんだよ!)


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