マーメイドはホテル王子に恋をする?!
あのー、それはどういう意味ですー?!


「市場調査をしたいだけだ。女連れの方が嗅ぎ回り易いからついて来い」


ついて来いって台詞は、もっとロマンチックな場面で使うんじゃなかったですか?!確かいろいろと憧れがあったような気もするし、相手も暴君ではなかった気がするーー。


「おいっ、聞いてるのか?!」


いきなり目の前に寄って来るものだから驚いた。自分よりも背の高い男性が上から顔を見下ろしているのも、かなり久し振りなような……


「こら!マーメイド!?」


もう一歩近寄るから思わず後ずさった。


「あ……はい、聞いてます!次の休みにですね。大丈夫、空けておきます!」


私はまた何かを言われても困ると思い了解した。
けれど、それを聞いていたラウンジの責任者の田邊さんによって、次の休みの日の市場調査は社長とのデートということになってしまった。



「いいわねー、マーメイドちゃん。あのイケメン社長とデートだなんて」


次の日のお昼、弁当を食べていたらそんな言葉をかけられた。


「えっ?デート?そんな約束していませんよ」


モグッと唐揚げを口に頬張り、滅相もないと呟く。


「だって昨日、会議の後で誘われてたんでしょう?その場に居た全員がそれを聞いたと言ってるわよ」


ラウンジの女子社員達はウンウンと頷き合う。
それを横目で眺め、あの暴君社長の所為だ…とムカついた。


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