マーメイドはホテル王子に恋をする?!
ちょい悪よりも確実に悪っぽい感じの人に会釈を返し、「ご宿泊ですか?」と尋ねた。


「うん、いい部屋準備して」


ニヤつく顔がイヤらしい。
早速海岸にいた女子をナンパでもして来たのだろうか。


「本日は生憎と海側の部屋は満室となっておりまして、申し訳ございませんが、山側のお部屋しかご用意出来ませんが、そちらでよろしいでしょうか?」


パソコンの画面とリーダー格の男性の顔とを行き来させながら尋ねる。
それなら止すわ…と言ってくれないだろうかと、虚しく心の奥で願った。


「あー、別に山でも全然いいよ。俺達構わねーし。なぁ?」


ちっとは構えよっ!…いや、是非とも構って下さい!!


嫌だな…と思いつつ、それでは山側のお部屋をご用意致しますね…とパソコンキーを操作する。

この人達は近所の部屋から煩過ぎると何度かクレームが上がっている。だから、常に端っこの部屋を勧めるのだ。



「301号室をご用意致しました。お部屋の準備が整うまで、ラウンジの方で少しお待ち下さい。その間、代表者の方のお名前とご住所、電話番号のご記入をお願い致します」


宿泊カードにリーダー格の男性が記入を始める。
他の男性陣はゾロゾロとラウンジの方へ下りて行き、角のテーブルを陣取って働く女子社員に声をかける。


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