マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「仕事上がるのいつ?」とか「上がったら一緒に飲まない?」とかいうのは毎度のこと。

皆はいい噂を聞かないものだから、「本日は予定がありまして」や「ご遠慮させて頂きます」と上手に断って逃げだす。


ナンパは一見失敗に終わったように見えた。
だけど、逃げられない場面があった。


「……書いたよ。部屋まで案内してくれない?」


リーダー格の男性はニヤリと笑って願う。
何度も来ているのだから、館内の様子は知っているだろうに。


「え…はい…。では……」


マズい。困った。
大川主任はいないし、男性スタッフは接客中だし…。


「ねー、早くー」


とっとと自分達で行きなよ!…と、それではこのホテルの品格が問われる。


「畏まりました。では、ご案内させて頂きます」


ちらっと男性スタッフの方に視線を向け、そこが済んだら代わってよ…と目で合図を送った。


私の先導に集まるヤンキー連中。
どうか何もされませんように…と、胸をハラハラさせながらエレベーターの前まで連れて行った。


三階のホールまで連れて行ったら、後は客室の場所を教えて逃げよう。
こんな人達の泊まる部屋まで案内したら、そのまま部屋に連れ込まれそうだ。


(やだもう。どうしてこういう時に限って出張になんて行ったの、主任〜!!)


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