マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「は…はい」


怯えながらシートベルトを引っ張り、カチッと差し込んでから目線を彼に送る。
ホテルではスーツ姿しか見たことがないが、今日の服装はカジュアルで素敵だ。


ストライプのシャツにVネックのサマーセーターとチノパン。
足元のスニーカーも一見革っぽく見えるデザインで大人っぽい。


それに比べて自分のファッションは情けない。
肩幅が広い為に、どうしても体型カバーを気にしてしまう。

五分袖のブラウスで肩と腕をカバーして、裾が広がったスカーツで下半身にもボリュームを作り上げないといけない。
ローヒールではバランスが悪いから、やっぱり少しはヒールのあるパンプスを履くと、今度は身長が目立ってしまう。


こういう時、相手が社長で良かったな…と言うべきか。
ハリウッドスターみたいな人の側に立てる私ではないけれど、身長だけなら一応釣り合いが取れて助かる。

社長は相手が私だろうが誰だろうが、全く気にはしないと思うけれど……。



「それで何処に行けばいいんだ?」


今日は観光名所を案内しろと言われていたのだった。
この辺りの名所を回るだけで、本当に市場調査になるのだろうか。


「じゃ…あの、道の駅にでも行きましょうか」


何処の町にも必ず一箇所はあると思われる道の駅。
国道沿いにオープンして以来、県内外からのお客様が増えている。


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