マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「朝のうちに行けば地元の人が作った野菜も買えますし、特産品の海産物もまだ売れ残っていると思います」


町外の観光客が少ない平日は、町内の主婦が買い物に来る程度だと聞いた。
田舎の人は朝が早いから、午前中にいい物は売り切れてしまうとも聞いたことがある。


「社長はお嫌いかもしれませんが、夏ミカンソフトもありますよ」


初日に片山さんと話していた「酸っぱい夏ミカン事件」という言葉を思い出した。
サングラスの奥から私を見つめた人は、その試食だけはお前がしろ…と呟いた。


「シャーベットみたいでサッパリしてて美味しいのに」


案外子供っぽい小山内社長に苦笑する。
実際、本当に幼いところがあるのかもしれない。


「他にはどんな特産品があるんだ」


車を走らせながら問われ、果物や野菜の県産品について教えた。
社長は頷きながらカーナビ通りに運転をし、数年前にオープンした道の駅に到着した。

土日祝日は満車状態の駐車場も平日の朝はスカスカ。地元の人もあまり居なくて、ラッキーと思っていたが甘い。



「おや〜、マーメイドちゃんじゃないの〜」


誰かと思えば近所のおばさん。
その声を聞いて、ちらっと視線を送ってくる人もいる。


「おはようございます…」


私の面は大体割れている。
幼い頃の栄光が邪魔をしていて、知る人ぞ知るプチ有名人みたいになっているのだ。


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