マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「な…何でもないです」


あーヤバい。
思わずときめきそうだった。


社長が見せたことのない顔ばかり見せるものだから、つい気持ちが寄りそうだった。


「変な奴だな」


社長は深く突っ込みもせず、そのまま県産品を見た後は、夏ミカンソフトを試食して次の場所へ行こうと言った。


「じゃあ次はあの架け橋を渡って島の方へでも行きますか」


海岸線に突き出たウッドデッキから指差して聞いた。


「島へ行くと美味しいお店もあるって聞いてますよ」


溶けてくるソフトをプラスチックのスプーンで掬いながらの会話。
夏ミカンのソフトクリームは思っていた以上に溶けるのが早くて、急がないと蕩けてしまう。


「何やってるんだよ。こうやって食べればいいだろう」


「あ…」


ひょいと手から取り上げられてしまった。
自分は食べないと言っていたのに、上からバクッと一口頬張る。


「冷たっ!…でも、酸味は思ってた程じゃないな。これならまあ食べれるか」


パクパクと二口続けて齧った。
冷たさが染みてきたのか、こめかみを指で押さえ込んでいる。


「しゃ、社長!」


「しっ!」


「……?」



唇の前に指を立て、「社長は止せ」と断られる。


「さっきも言っただろう。恋人同士として通すって」


だから花梨もソフトを食べろと向けられる。社長が口を付けた部分を自分も食べろと言うのか。


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