マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「地元に根付いてくれないからだと聞いてますよ。ホテルも店も業績が下がれば直ぐに撤退するでしょう?建物という箱(ゴミ)だけを残して逃げるイメージが強いんです」


何度もそんなことが重なっていくうちに、漁師さん達も魚を卸さなくなった。
地元で売り捌くことができなければ、市内の大きな市場へ持って行けばいいのだから。


「惜しいな。折角新鮮でいい物があっても手に入らないというのはつまらん」


唇を突き出してブツブツ言っている。
ホテルが好きだと言っていた秘書の岩瀬さんの言葉通りのようだ。


「誰かが直接交渉してみたらどうだろうか。地元に信頼の厚い人がいればいいが…」


橋の上を運転しながら思案する。地元に信頼の厚い人ね…と思いつつ、「そうですね〜」と目線を空に向けて悩んだ。



「…花梨、お前は?」


「は?」


もう名前で呼ばれる違和感が薄れてきたところへ問われ、「何がですか?」と聞き直す。

社長は橋を渡りきった場所にある展望台の駐車場に車を止め、シートベルトを外すと助手席に座っている私の方へ体の向きを変えた。


「お前なら交渉可能じゃないか?何だか知らないが、やたらと有名人みたいだし」


「えっ!?いえ、私は別に有名な訳じゃ…」


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