マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「でも、さっきの道の駅でも視線を浴びていたじゃないか。声をかけてくる人は皆、花梨を『マーメイド」と呼ぶし、知らない人がいないと言うか、やたらと知られている雰囲気だったぞ」
「それは、私が…」
話しかけてハッと唇を閉じた。
口にすることではないと思い直し、慌ててくるっと顔を背けた。
「……さっきの道の駅ではたまたまです。同じ地区に住む人達も居たし、家もあの場所からそんなに離れてはいませんから」
過去の話をしたところで何になる。
幼い頃の記録も今では塗り替えられているし、私が水泳をしなくなって何年にもなるのだ。
「そうか…」
社長は詰まらなそうに呟き、シートベルトを締め直す。
そのまま私がお勧めするパワースポットまで車を走らせつつ、お互いに何も話さず黙っていた。
私は窓の外を眺めずに俯いていた。
この島の海にはいろんな思い出があり過ぎて、ちょっと複雑な心境なのだ。
「……着いたぞ」
声をかけられてハッと顔を上げる。
振り返ると、社長はサングラスを外そうとしている。
「海鳴(うみなり)神社に着いたぞ。ここがパワースポットなんだろう?」
「は…はい」
ぼんやりとしたまま返事をすると、社長は少し口角を上げた。
私が俯いて考え事をしていたから、わざと何も声をかけずにいてくれたのだ。
「それは、私が…」
話しかけてハッと唇を閉じた。
口にすることではないと思い直し、慌ててくるっと顔を背けた。
「……さっきの道の駅ではたまたまです。同じ地区に住む人達も居たし、家もあの場所からそんなに離れてはいませんから」
過去の話をしたところで何になる。
幼い頃の記録も今では塗り替えられているし、私が水泳をしなくなって何年にもなるのだ。
「そうか…」
社長は詰まらなそうに呟き、シートベルトを締め直す。
そのまま私がお勧めするパワースポットまで車を走らせつつ、お互いに何も話さず黙っていた。
私は窓の外を眺めずに俯いていた。
この島の海にはいろんな思い出があり過ぎて、ちょっと複雑な心境なのだ。
「……着いたぞ」
声をかけられてハッと顔を上げる。
振り返ると、社長はサングラスを外そうとしている。
「海鳴(うみなり)神社に着いたぞ。ここがパワースポットなんだろう?」
「は…はい」
ぼんやりとしたまま返事をすると、社長は少し口角を上げた。
私が俯いて考え事をしていたから、わざと何も声をかけずにいてくれたのだ。