マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「さっ、どうぞ」


岩瀬さんまでがこっちです…と身を屈めて案内しだす。
私はそれに導かれるようにして、社長の前を通り抜けた。



「花梨」


涼やかな声がして振り向くと、切れ長の目尻を少し下げて、社長が微笑んでいる。
何も言えずに立ち竦む私に「後で会おう」と声をかけると去って行った。


その力強い背中に心を奪われつつ、自分の足先を奥に向け直す。
これから始まるディナータイムが終わった時、私の膨らみかけた想いも萎むのだ…と覚悟を決めた……。



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