マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「体はどうもない?一応病院へ行こうか?」


「私は平気です。それよりもあの子をお願いします」


背中から掛けられた毛布を胸の前で交差して握った。
私の肩を抱いているのはさっきからずっと同じ人だ。


「花梨、一応病院へ行けば」


「いいです。温泉で温まればこんな寒さくらい平気」


強がっている訳でもなく返事をすれば、社長は厳しい顔つきになった。


「本人がそう言いますから早く病院へ向かって下さい。大事なお客様だから丁重に運ぶようにお願いします」


救急隊員は「わかりました」と言って立ち上がると救急車へと向かい出す。
間もなくサイレンが鳴りだして、それは徐々に遠くなり聞こえなくなった……。


救急車が去った後、社長は従業員達にホテルへ戻るように…と指示した。
心配そうに私を振り返りながら仕事へ戻る皆を見ていたらーーー



「……歩けるか?」


肩を抱き続けていた社長の声に頷き、膝を立てようとするのだけれどーーー。



「あれ…」


ガクンガクンと膝が折れて仕様がない。
寒くて固まったのもあるけれど、久し振りに泳いだから足が重くて動かないのだ。


「歩けないのか?じゃあ抱えてやるよ」


あっという間に両足を掬われて体を横抱きにされた。
社長の体に対して垂直になった自分の体に驚き、慌てて大きな声を出した。


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