マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「い…いい!いいですっ!下ろして下さい!歩けますから…!」


毛布を掛けられたまま自由の効かない足をバタつかせようとする。

社長にお姫様抱っこなんてあり得ない。
そんなことをさせたら明日からの勤務が怖い。


「いいから大人しくしておけ。このまま部屋へ行くぞ」


「えっ…」


「お前の肌は誰にも見せない。安心しろ。俺だけのものにしておく」


「ええっ!」


「もう煩い!静かにしないと唇を奪うぞ!」


「は………んぐっ……」


急に唇を閉じたら笑いかけられた。
その横顔を間近に眺めながら、カッカッと熱を帯びる顔を下に向ける。


「まるで陸に上がってきた人魚姫のようだな」


社長の言葉に自分の姿を見て確かにそんなふうに見えないこともないと思った。


「童話では人魚は泡になるんだよな。でも花梨、お前は泡になるなよ」


エレベーターの中に入る間際、社長はそう言って唇を寄せてきた。
身動きの取れない私は、その熱いキスをただ受け止めるだけになってしまったーーー。


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