マーメイドはホテル王子に恋をする?!
オドオドしながら壁に沿うように歩き、壁が途切れた場所で顔を覗かす。


社長は奥に置いてあるライティングデスクに付いてパソコンを操作していた。
真剣な表情で黙々と指を動かし続けている。


「……あの……社長……」


声も掛けづらい雰囲気。
事故処理は無事に終わったのではないのか。


「待て。直に終わる」


そうですか。…つーか、何をしている?



(弱ったな。何処で待てばいい?)


室内をキョロっと見回して、やはりソファに居ようと決めた。

コソ泥みたいに足音を忍ばせて歩き、ちょこん…と膝を揃えて座り込む。
バスローブの胸元からブラが見えると困るから、座った直後に俯いて確認。



(…うん、ヨシ。見えてない)


と言うか、この後どうする?
社長に頼んで自分の服を持って来て貰うか。


(だって、ホテル内ではパジャマでもウロつけないし、ましてやこの格好では更にタブーでしょう)


平日だから宿泊客は少ないと思うけれど、人目に付くとやっぱりマズい。

だから社長に頼んで…と思うが、彼はなかなかパソコン操作を止めない。


落ち着かなくて手足をもぞっと動かす。

社長の仕事はいつになったら終わるんだよ。
私はいい加減湯冷めしそうなのに……。



「クシュ!」


ほら〜、またクシャミが出た。


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