狂愛




長年一緒にいて、彼の隣にいる私は何度白い目で見られたことか。



しかしそれを鼻にかけることなくいつも平然としている彼。



喜怒哀楽を表に出すことも少ない。



そんな彼が驚いている。それだけで私を激しく動揺させた。





「“智樹と一緒にいてもドキドキしなくなったの”」





彼を取り巻く雰囲気すべてが好きだ。



しかしそれは“安心”でするからこそであって、彼のことを恋人として好きか、と問われると自信を持って頷けるか分からない。



ずっと一緒にいて、最近ははじめの頃のドキドキ感がなくなったと思う。



期待や不安もすることがなくなったし、代わり映えのない日々が続いていた。



要は恋人との間でよくあるマンネリ化というものだと思う。





「ごめんね。勝手に」



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