狂愛
「サッカーが得意。普段学校ではコンタクトをしていて、家ではメガネをかけている。母、父、姉、貴方の四人家族。髪は茶の癖っ毛だけど、実は黒のサラサラヘアに憧れている。貴方の家の場所。昨日の朝食、昼食、夜食のメニュー。飲み物はいつもいちごミルク。靴下は左から履く。身長や体重、足のサイズまで何でも知ってますよ」
その場にいる誰もが固まった。
だがそれをしって知らずか、満面の笑みを浮かべる彼女。
彼女は他の者の存在など認識していない。
貴方と私。
ただそれだけ。
皆、彼女の存在を奇異の目で見ていた。
「先輩が捨てた使用済みストローも全部保管しています。ずっと貴方をみていました」
その場にいた人たちはその言葉をきき、意味を理解するなり席を立ち上がり、彼女から距離をとった。
当然だ。
ストーカー宣言をする人がいたのなら、誰もが引いてしまうのは仕方のないことだと思う。
「嬉しいよ」
──しかしそれは彼を除いて。
彼の顔を見ると、頬を紅潮させており嬉しさを露にしていた。