狂愛
「彼は誰も好きにならないの!なんであんたみたいな地味でブスな女が!!彼の足元にも及ばないのよ……ッッ!!!」
────だが一つ誤りがある。
「……ねぇ、その口黙らせようか?」
低く唸るような声を出す彼に、目の前の女はあからさまに肩を震わせた。
彼は誰の “モノ” でもない。
彼は彼であり、1人の人間。
誰を愛そうが愛されようが、それは文字通り彼の勝手だった。
「ご、ごめんなさい…ッ!先輩の前ではしたない言葉を…」
不快になるのも当然のこと。
「彼女のことを悪くいったね?君」
──しかし、彼はそんなことなど本当にどうでもよかったのだ。
彼女を侮辱した…たったそれだけの、しかしそれほどのことをした女を睨み付ける彼は、さながら獲物を見つけた猛禽類のよう。
「あぁ~、お前みたいな醜女ごときが彼女を愚弄するなよな。……あー、腸が煮えくり返る思いだ」