××したいくらい、好き。
0.5:かいとくんは有名人
少しずつ気温が高くなりつつある春。
桜の木々に校庭が囲まれている、白南風(しらはえ)高校。
この学校で私、高橋絆奈はこの春から学年を1つ上げ、2年生になります。
クラス替えしたばかりの教室が近づいてくるにつれ、私の心臓のリズムも比例して加速していくのがわかりました。
「うまく…やっていけるかなあ……」
内気で恥ずかしがりで、弱虫で人見知りな性格の私は、小さい頃から友達はできないし基本的に一人でいることが多かった。
春って、必ず自己紹介の時間が設けられるから苦手で仕方ない。
人前で話すことなんて何もないのに…。
そんなことを考えながら、とぼとぼと重い足取りで廊下を歩いていたとき。
「きず~!! おはよ!」
ひときわ明るい声で私のことを「きず」と呼び、後ろから飛びついてきた子は。
「わ…っ!お、おはよう、なっちゃん」
短めのツインテールがぴょこぴょこと跳ねて、元気でかわいらしさ全開の鈴木なつみちゃん。
幼稚園のころからの幼なじみです。
「まーた下向いて歩いてる!! そのうち壁にぶつかるよ!?」
笑いながら言うなっちゃんに、つい先ほど電柱に頭をぶつけたなんて言えなかった。
私が唯一心を開いていられるのは、このなっちゃんだけ。
新しいクラスがなっちゃんと一緒でよかった。
そのため、クラス替えという第一関門を突破したわけだが。
私には、もうひとつ大きな悩みがありました。
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