好きですか? いいえ・・・。
「聞いてた?」
お母さんが洗い物をしながら背中で訊いてきた。
「うん……聞いてた。」
「あんないい子、他にはいないわよ? グズグズしてると離れてっちゃうわよ?」
「……わかってる。」
わかってるけど、でも、私には大好きな人がいる。川上昇くんという、大好きな人が。
「まあ、断るにしても、ちゃんと断ってあげなさい。中途半端が一番彼を苦しめることになるんだからね?」
「……わかってる。」
「でもまあ、お母さんは落合くん、いいと思うけどなー。」
「……わかってる。」
そんなことはお母さんに言われなくてもわかってる。わかってるから、悩むんだ。
私は悩んでいる。迷っている。落合くんのことが好きになりかけている。